熱意や好意は逆効果 転職先はあなたの価値を見ている

11月 17, 2020 転職
写真はイメージ =PIXTA

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コロナショックを背景に、転職者が増えている実感があります。今の会社にいても先行きが怪しいから、ということですが、だからといって基本がないがしろになってはいけません。転職者を受け入れる側は、今まで以上に厳しい視点を持っています。

今までの会社の当たり前がそうではないことを知る転職

「今の会社にいても先行きが不透明なので、初めて転職を考えています」

そんな求職者が増えていると、人材紹介会社の知人から聞くようになりました。以前の記事「コロナショックの先 4つの給与クライシスが始まる」でも書いたように、残業削減、昇格延期、昇給延期、賞与減額などが進んでいます。あわせて読みたい結果は上司にどう見える リモートワークの生かし方出世のカギは両利きのキャリア 新たな探索に踏み出せ

厳しい会社の状況を踏まえ、少しでも将来性のある業界や会社に転職しようとすることは当然の判断です。

一方で、多くの日本企業はメンバーシップ型と言われるように、一度就社すると定年までそこで過ごすことを当然と考える人たちで構成されています。転職があたりまえになりつつあるといっても、大半の人にとって転職は一大事であり、なるべくならしたくない、と思うものかもしれません。

しかし今回のコロナショックでは、そんな人たちも改めて転職を考えるようになっています。

さて、彼ら、彼女らは転職活動を通じて、人生ではじめて他の会社を知るわけですが、そこで大きな驚きと感動を受けているようです。それまであたりまえだと思っていた会社の常識が、世の中の非常識であったことを知っています。

たとえば「残業は当然」と思っていたら、世の中では残業がない会社も増えているという事実。

「会社には定時がある」と思っていたら、フレックス制度を入れている会社では出社がばらばらなこともある、とか。

「有給休暇はなるべくとらない」とか「会議では偉い人から発言する」とか「ハンコは少し傾けて押す」とか「朝礼があるのはあたりまえ」とか。

それらは会社ごとに違って当然なのですが、今までいた会社を当たり前、と思っていた人たちにとってはとても新鮮に映るようです。

ただし面接の場で目を輝かせてしまうと、その会社から不合格の通知が届く可能性が高まります。

自分の損得のための転職だと言ってしまっていないか

「ぜひ御社で働かせてください。こんな素晴らしい会社があるなんて知りませんでした」

そう熱弁すればするほど、その求職者が合格する確率は下がってゆきます。

理由はなぜか。

結論を一言で示すなら、それは主語が自分になってしまっているからです。私にとって御社は価値がある、ということを言っているだけなのです。

コロナショックのように大きな変化があると、どうしても人は不安を感じやすくなります。そして身を守るために新しい行動をとることになります。

その際にはもちろん「自分」あるいは近しい人を守るために行動します。それが転職活動となり、新しく活躍できる場を探すきっかけになるわけです。

たとえばこれまではメーカーで営業職として勤務していたとします。しかしコロナショックによって新規営業先が激減し、個人としての業績が悪化したので評価が下がりました。また営業のための見込み先そのものが減ったのと、見込み先への物理的な営業訪問がなくなったので、残業時間が減り、給与の手取りが減りました。評価が下がった結果は夏の賞与減に反映され、さらに会社全体の業績悪化により、冬の賞与は昨年対比で8割減少という話が流れてきています。こんな状況では、年次的に来年なるはずだった係長昇進もなくなる可能性が高まっています。今年の年収はすでに昨年対比でかなり下がり、来年はそれよりも下がる可能性が高いと見込まれ、家族との話も暗くなってしまいました。

自分の生活を守るため、あるいは家族の生活を守るため、これまで想像もしていなかった転職活動に飛び込む決意がようやく生まれます。

さて、そうして転職活動をしてみると、意外にコロナショックの中でも伸びているという会社があります。具体的に話を聞くほどに、先行き暗い今の会社を離れて移りたい、という思いが高まります。やがて「ぜひ御社で!」となるわけですが、その会社の経営者は何を考えているでしょう。

転職先に価値をもたらせるか

「なるほど、今の会社の将来性に不安がある、というのは確かに理解できる」

「うちの会社を知るほど目が輝くのを見ていると、うちの組織作りが褒められているようでうれしい」

「たしかに彼はうちに来た方が幸せになるだろう」

「で、うちはこの人を雇ったらどんな得をするんだろう?」

熱意や好意は、面接官となる人たち、とりわけ経営者に対して良い印象を与えます。しかしコロナショックの中で業績を伸ばしている会社の中には、単にコロナが順風になった会社だけでなく、厳しい環境変化をシビアに見据えるか、あるいはあらかじめ何らかの手を打っていた先見性のある会社も含まれています。

そういう会社の経営者は、単純な好意にほだされたりはしません。

あくまでも冷静に、今目の前にいる求職者を品定めします。

そしてその視点は、この人を雇ったらどんな活躍をしてくれるだろう。その結果、会社の業績にどんな良い影響があるだろう。成果はどれくらいの期間にどれくらい生まれるだろう、といった経営の視点からのものに他なりません。

そんな経営者に対し熱意と好意だけを示しても逆効果です。熱意や好意ならむしろ新卒を雇った方がまだましだ、と思う場合すらあるのです。

中途での転職を目指すのなら、コロナショックのタイミングであるかどうかにかかわらず、転職先にどのような価値を提供できるかを示せなくてはいけません。

売り手市場から買い手市場に大きく風向きが変わった今、価値を求められる度合いは今後さらに高まってゆくのですから。平康慶浩

セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。グロービス経営大学院准教授。人事コンサルタント協会理事。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで180社以上の人事評価制度改革に携わる。

投稿者: 瑚心すくい

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