鳥の目と虫の目が大事 「要するに/例えば」で切り替え

11月 4, 2020 ビジネス思考法

「戦略」をあなたの言葉で説明してください

私たちは普段たくさんのビジネス用語を使って仕事をしています。ところが、その意味を問われると案外うまく説明ができず、できたとしても人によって意味が違っていたりします。典型的なものに「戦略」という言葉があります。

今年は、コロナショックのせいで、大幅に戦略を見直した企業が多かったのではないかと想像します。その戦略とは何でしょうか。「戦略とは?」と問われたら、何と説明をしますか。

この質問に対する答え方は大きく2通りあります。一つは、「企業の長期的な作戦である」「ビジョンを具現化するための基本方針」「選択と集中を明らかにしたもの」といった、戦略の定義を述べるやり方です。あわせて読みたい斬新さ重視、ざっくり検証 コンサル流仮説思考の極意チコちゃん人気 「問いの深さ」が核心 

ちなみに、Wikipediaには「特定の目的達成のために、総合的な調整を通じて力と資源を効果的に運用する技術・理論」と書いてあります。「さすがうまい説明」と思う方もいれば、「難しくてサッパリ分からない」と感じる人もいます。そこでもう一つの説明の仕方があります。

「たとえば、かつての日本軍は、南方の天然資源の確保とアメリカの太平洋艦隊に打撃を与えることを狙い、アジアとハワイを同時に攻めた。こういうのを戦略と呼ぶ」というやり方です。具体例で示すわけです。

「経営学では『いかに勝てる位置取りをするか?』というポジショニング論と、『いかに資源を最大限に活用するか?』というケイパビリティー論の2つの考え方がある」という学説を紹介するのも同じ範疇(はんちゅう)に入ります。2つの説明は、根本的に何が違うのでしょうか。

抽象的に考えて全体や本質をとらえる

勘の良い方はお気づきのように、前者では戦略を抽象的に説明したわけです。抽象化力を働かせると、あのような解説になります。

軍事で使う戦略と企業経営で使う戦略は、少し意味が異なります。後者にしても、企業の数だけ戦略があります。一つの企業の中にも、経営戦略、事業戦略、競争戦略などたくさんの戦略があります。それらを全部ひっくるめ、細かい話はそぎ落し、共通の要素を見つけて一般化する。それが「抽象思考」です。

そうすることで、情報がコンパクトに圧縮でき、ザックリと全体が把握できるようになります。物事を俯瞰(ふかん)的に見ることができ、本質を浮き彫りにできます。抽象化しておけば、どんな事象にも当てはめることができ、汎用的に使えるようになります。

抽象思考にスイッチを入れる言葉があります。「要するに」「つまり」「一言で言えば」です。

たとえば、大人数で会議をしていると、いろんな意見が出て収拾がつかなくなることがあります。そんな時こそ抽象思考の出番です。「要するに、みんなの言いたいことは……」と共通項を取り出してみましょう。それこそが合意点です。まずは大まかな合意点をつかんでから、細かい点を調整していかないと、まとまるものもまとまらなくなります。

具体的に考えないと違いや変化を見落とす

抽象思考ではバッサリと枝葉を落として一般化します。あるいは、物事を引いて見て全体像をつかもうとします。

ただし、やり過ぎは禁物。「戦略とは捨てることなり」となると、かえって分かりにくくなります。あるいは、「グローバルなクライシスに対応すべく、新たなイノベーション戦略の構築をワンチームで成し遂げる」と言われて、意味が分かるでしょうか。こんな「言語明瞭・意味不明瞭」の話で議論が進んでいるとしたら危険信号です。

それに、抽象思考ばかり使っていると、すべてのことが一般化されてしまい、差が出なくなります。「神は細部に宿る」のことわざ通り、独自性を出すには抽象思考は不向きです。

そこで役に立つのが「具体思考」です。大きすぎる話を小さくして、物事の細部から考える思考法です。

よく使うのが事例を挙げて考えることです。ストーリーを使えば、輪郭がハッキリして、イメージがつかみやすくなります。本稿でも戦略という言葉を例にして抽象思考を説明しています。

メタファーやアナロジーを使い、何かにたとえるのもよい方法です。企業活動を、戦争、スポーツ、ゲーム、機械、生命などにたとえて考えるのは常とう手段となっています。

もう一つよく使うのが要素に分解することです。たとえば、戦略を「ヒト」「モノ」「カネ」や「どこで」「何を」「どうやって」に分けて考える、といったやり方です。

具体思考にスイッチを入れる言葉が、「たとえば」「例を挙げると」「細かく言えば」です。これを唱えると具体的に考えざるをえなくなります。

「鳥の目」と「虫の目」を使い分ける

細かいところに入り過ぎると全体や本質を見失ってしまいます。かといって、大きなところばかり見ていると、違いや変化が分からなくなります。

つまり、2つの思考はセットにして使わないと役に立ちません。抽象的に考えた後で具体的に考え直すといったように。これを「抽象度を動かす」「チャンク(塊)を変える」と言います。

たとえば、人と話をしていると、「え、何だって?」と聞き直されることがあります。そんなときによくやってしまう失敗は、相手の落ち度だと思ってしまうことです。「相手がちゃんと聞いていなかった」と考えて、同じ話をもう一度してしまうのです。

そうではなく、自分の落ち度つまり説明の仕方が悪かったのです。違う説明の仕方をしないと、「やっぱり分からない」となるだけです。

こんなときこそ、抽象度を動かして説明をし直してみましょう。「つまり、○○ということさ」「例を1つ挙げてみようか」と。相手が分かると同時に、自分の頭の中もクリアになります。

鳥の目で見る抽象思考と虫の目で見る具体思考。2つの思考が両輪となって私たちの考えが深まっていきます。抽象度を動かすことを思考の習慣にしてしまいましょう。

堀公俊
日本ファシリテーション協会フェロー。大阪大学大学院工学研究科修了。大手精密機器メーカーで商品開発や経営企画に従事。1995年からファシリテーション活動を展開。2003年に日本ファシリテーション協会を設立、研究会や講演活動を通じて普及・啓発に努める。著書に「ファシリテーション入門第2版」「会議を変えるワンフレーズ」など。

投稿者: 瑚心 すくい

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