富士通とNECが脱「紺屋の白袴」 DX率先できるか

日経クロステック

他者を変えたければまず自分から――。富士通NECが「脱・紺屋(こうや)の白袴(しろばかま)」ともいえるプロジェクトに挑んでいる。全社の基幹システムを刷新し、データに基づき迅速な経営判断を下せる体制を整える。バラバラな構成だった世界のグループ企業の基幹システムを独SAP製統合基幹業務システム(ERP)パッケージで統一。業務プロセスも標準化し、経営とIT(情報技術)を一体化させた理想的な姿を目指す。

両社は顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を事業の柱にすると表明済み。率先してDXを進め、自らを顧客向けのショーケースにする考えだ。

■富士通、世界統一システムへ

富士通が進めているのが「One ERPプロジェクト」だ。SAPや米オラクル製のERPパッケージ、独自開発アプリケーションなどバラバラな構成の基幹システムを、SAPの「S/4HANA(エスフォーハナ)」に統一する。

「グループ社員13万人、売上高4兆円規模の日本企業として最大のSAP導入事例になる」。同プロジェクトを率いる福田譲執行役員常務は、こう説明する。福田氏は時田隆仁社長に請われ、SAPジャパン社長から富士通に転じた。顧客企業のSAP導入を支援してきた立場から、ど真ん中の当事者として導入を推進する。

同プロジェクトの総投資額は非公表だが、「一般論としては500億~600億円かかる」(福田執行役員常務)。2023年4月をメドに日本の本社向けシステムを稼働させる方針だ。

規模だけでなく難度も「極大」(同)という。目指すのはグローバル・シングルインスタンス、すなわち世界の富士通グループ全体で単一のシステムを導入する。日本の富士通本体にグローバル標準のシステムを導入し、世界の各拠点は同システムをクラウド経由で利用する、といった形態が一案だ。拠点ごとのカスタマイズは、原則として認めない。

富士通はERP導入と表裏一体で社内の業務改革プロジェクトも進めている。「フジトラ・プロジェクト」と名付け、20年7月に始動した。

「19年に社長に就任した際、IT企業からDX企業へ変わると宣言した。DXはデジタル技術を適用すれば成し遂げられるものではない。業務プロセスや企業風土など、企業や団体の体質そのものを変える必要がある。顧客や社会のDXを推進すべく、富士通自身のDXに取り組んでいる」。時田社長は改革の狙いをこう述べた。時田社長は自ら最高DX責任者(CDXO)を名乗り改革の陣頭指揮を執る。

富士通の時田隆仁社長

富士通の時田隆仁社長

フジトラ・プロジェクトの推進体制として現場の事業部門から「DX Officer(オフィサー)」、CEO室に「DX Designer(デザイナー)」と呼ぶ担当者をそれぞれ設けた。「部門同士の横の連携をDX Officerが担い、経営と現場の縦の組織をDX Designerがつなぐ」(福田執行役員常務)。

■NEC、社内外のデータ活用基盤整備へ

NECは同社グループの基幹システムを従来の「SAP ECC 6.0」からS/4HANAへ刷新するプロジェクトを進めている。同時にデータ分析・活用システムも構築する。21年度中にNEC本社向けのシステムを稼働させる。既にシンガポールやタイ、オーストラリアなど海外10カ国14拠点で稼働済みだ。

同社は10年から国内外のグループ会社にSAPのERPパッケージを導入し、販売や経理、購買といった業務プロセスの標準化を進めてきた。自社の基幹系データに加え、顧客データやインターネット上のSNS(交流サイト)投稿データなど社内外の様々なデータを分析、活用できるようにするため、全面刷新を決めた。

「経営と業務、ITを一体にした改革こそ目標であり、ERPパッケージは手段にすぎない」。富士通とNECはともにこう強調する。

両社は経営戦略から組織運営、人事や会計の制度・ルール、業績やマスターといったデータ、業務プロセス、アプリケーション、ITインフラまで全てをグローバルで標準化する。IT企業が掲げる最も理想的なプロジェクトを率先垂範する考えだ。理想的であるものの、その分だけ難度も高い。

両社が目指す姿はパッケージソフトを提供する企業などとともに顧客企業へ売り込んできたものだ。では、これまでどの程度実践できていたのか。新たな事業の柱と位置付けるDX支援とは、まさにIT導入にとどまらず業務そのものを変える取り組みにほかならない。DX支援の担い手を名乗る以上、自分たちすら変えられなければ顧客の変革はおぼつかないだろう。

(日経クロステック/日経コンピュータ 玉置亮太氏)

投稿者: 瑚心すくい

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