社員も会社も「副業」 中堅・中小が探る雇用の形

8月 18, 2020 働き方改革, 副業

コロナ危機 地方から 逆風に挑む(3)

コロナ禍で運行が減ったバス乗務員の雇用維持に向けて神姫観光は副業容認に踏み切った

コロナ禍で運行が減ったバス乗務員の雇用維持に向けて神姫観光は副業容認に踏み切った

新型コロナウイルスの影響で長く続いた人手不足の様相は一変した。観光業界などで雇用が急速に細る一方、物流やネット関連は人手不足が続くなど業種間の格差が鮮明になっている。コロナ禍の先を見据えて雇用をいかに守るか、全国各地の中堅・中小企業は対策を急いでいる。

食品物流大手のムロオ(広島県呉市)は新型コロナの影響で仕事が激減したタクシー会社や観光バス会社と「運転手のワークシェア」に取り組んでいる。巣ごもり需要の拡大でスーパーへの食品物流が急増。慢性的な運転手不足に悩むムロオに業態の異なる運輸会社が助太刀し、一緒に難局を乗り切る格好だ。

第1弾として5月に日の丸リムジン(東京・文京)のタクシー運転手11人を埼玉県の物流拠点に招き、トラック配送などを任せた。日の丸に在籍したままムロオで副業する形で、給与はムロオ側が支給した。反響はたちまち全国に広がり、愛知県や長崎県の観光バス会社も参加。ワークシェアは30人に増えた。

ムロオの山下俊一郎社長は「最初は物流業界特有の用語に戸惑うことが多かったようだが、すぐ慣れてもらえている。人に教えることで、結果的に社員の成長にもつながっている」と話す。

訪日外国人客や国内客の需要が消失した観光業界は雇用維持への危機感が強い。神姫バスグループの神姫観光(兵庫県姫路市)は観光バスや高速バスの運行が止まった3月、従来は禁止していた副業を一時的に認めることにした。乗務員の3分の1にあたる約80人が副業を届け出て、コンビニや建設、物流などの業種で働いたという。

観光バス事業を手がけていた家康コーポレーション(福岡県大野城市)は会社ぐるみで「副業」に挑戦する。観光需要の消失を受け、サーモグラフィーによる検温機能付き顔認証カメラの販売を6月に始めた。従業員の多くはバス運転手で営業経験はほとんどない。報酬は契約獲得に応じた出来高制だが、販売ノルマは設けず、従業員がマイペースで営業に取り組めるよう配慮する。

地域全体の雇用のミスマッチ解消を後押しするのが静岡銀行。野菜の生産・販売を手がける鈴生(静岡市)は新工場立ち上げのため、東南アジアから5人の特定技能実習生を4月に迎え入れるはずが、コロナの影響で来日が困難になった。そこで取引先の人材をマッチングする静岡銀のサービスを利用した。

鈴生の鈴木貴博社長が「外国人に代わる労働力を確保したい」と相談したところ、障がい者施設などを運営するエミクルグループ(同)のニーズと合致。施設利用者に草取りを業務委託する形で人手不足を補った。静岡銀の担当者も「コロナ禍でも地域でうまく人材を活用する事例ができた」と手ごたえを感じる。

家康コーポレーションは検温カメラの販売を始めた

家康コーポレーションは検温カメラの販売を始めた

全国の6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.11倍と前月から0.09ポイント低下し、5年8カ月ぶりの低水準に沈んだ。足元の雇用は悪化しているが、感染拡大が収束すれば人手不足が再び強まる可能性は否定できない。コロナ後を見据え、貴重な「人財」をいかに守るか。従来の不況期とは異なる、新たな知恵が求められている。

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投稿者: 瑚心すくい

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