柔軟な雇用に欠かせないフリーランスの戦力化

知らされなかったでは済まされない「下請法」対策

日比谷総合法律事務所
弁護士
多田 敏明 氏

エン・ジャパン株式会社
新規事業開発室 pastureグループ
事業責任者
高澤 真之介 氏

働き方が多様化する今、特定の企業・組織と雇用関係を持たずに仕事を請け負うフリーランスのワークスタイルが増えている。コロナ禍下で柔軟な雇用を目指す企業にとっても、高いスキルを備えたフリーランス人材の戦力化は成長の大きな鍵となる。しかしその際「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」の遵守が絶対となる。弁護士の多田敏明氏とエン・ジャパンの高澤真之介氏が、その注意点を語り合った。

「下請法違反」でブランドイメージが失墜することも

写真:多田 敏明 氏

日比谷総合法律事務所
弁護士

多田 敏明 氏

―― 内閣府が2019年7月に公表した調査結果によると、日本国内のフリーランス人口は300万人を超え、就業者全体の約5%を占めています。近年は下請法の違反が増加傾向にあると聞きますが、そもそも下請法とはどんな法律なのでしょうか。

多田 独占禁止法では、取引上優位な立場にある事業者が取引先に対して不利益を与える「優越的地位の濫用(らんよう)」を禁止しています。しかしどのような行為が「優越的地位の濫用」に当たるのか、分かりにくくあいまいな面があります。そこで濫用行為が行われがちな下請取引に適用対象を限定して違反行為を具体的に示し、下請事業者の利益を守るために作られたのが下請法です。

 下請法に違反する企業は年々増加傾向にあり、2019年度は約8000件の指導件数が公正取引委員会から報告されています。これは違反事案が増えているという見方もできますが、下請法の知識の普及と公正取引委員会や中小企業庁が執行を強化していることが相まって、これまで見逃されていた違反行為が表面化してきているという見方もできると思います。

―― 下請法ではどのような行為が禁止されていて、違反するとどのような罰則・制裁を受けるのでしょうか。

多田 下請法ではまず、下請事業者に責任がないのに発注した成果物の受け取りを拒否したり返品したりする行為を禁止しています。また発注時に決めた代金を後で減額する値下げ行為、一般的に支払われる対価に比べて著しく低い下請代金を不当に要求する「買いたたき」などの行為も禁止され、代金は納品後60日以内に定めた期日に支払うことが義務付けられています。

 最近は、フリーランスのデザイナーやライターに情報成果物の作成を委託する親事業者が増えていますが、注意を要するのは「不当なやり直し」です。事前に交わす契約書などでやり直しに関する取り決めを行わず、不当にやり直しを要求することも違反行為になります。やり直し要求は、うっかりやってしまいがちなので注意が必要です。

 これらの違反行為を行うと親事業者には原状回復と再発防止措置をとるように指導が行われます。違反内容によっては公正取引委員会から勧告が行われ、その親事業者の社名と違反行為の概要が公表されます。このほか下請法に定められている発注内容を記載した書面の交付、取引内容を記載した書類の作成・保存などの義務に違反すると、50万円以下の罰金を科す条文があります。

 実際に「下請法違反」として勧告・新聞報道に至ってしまうと、その親事業者は「下請いじめ」を行った企業として、自社の評判やブランドイメージを大きく落とすことになります。

法令遵守に有効な取引プロセスのシステム化

写真:高澤 真之介 氏

エン・ジャパン株式会社
新規事業開発室 pastureグループ
事業責任者

高澤 真之介 氏

―― 下請法違反を防ぐために親事業者はどのような取り組み、対策を講じるべきなのでしょうか。

多田 昨今注目されているのが、フリーランスとの契約問題です。親事業者の発注担当者が個人的に懇意にしているフリーランスへ書類を交わさず口頭で発注し、後になってトラブルが発生し下請法違反を問われるケースが見受けられます。

 親事業者がまず心掛けたいのは、フリーランスは一緒に事業を行っていく「パートナー」であると認識することです。そのうえで下請法を遵守するための取り組みとして有効なのは、下請事業者との一連の取引プロセスを可能な限りシステム化・ルーティン化し、人の判断に頼らない仕組みづくりです。特に下請法の内容をシステムに取り込み、例えば取引に必要な発注書を自動作成したり、納品から60日を超えた支払日をアラームで知らせたりしておけば、違反の多くを占める下請法所定の発注書面の未交付や支払い遅延を回避でき、フリーランスを含む下請事業者にとっての安心感にもつながります。勧告といった事態を招かないためにも、費用をかけてでもシステム化する価値はあるでしょう。

―― エン・ジャパンが運営するフリーランスマネジメントシステム「pasture(パスチャー)」では、下請法に関してどのような相談を受けることがありますか。

高澤 最近はデザイナーやライター、コンサルタントなどクリエーティブな職種を中心にフリーランスで活躍する人たちが急増しています。また働き方改革によって副業・兼業が認められ、会社に所属しながらフリーランスとして仕事を受ける人も増えています。そうしたフリーランスの人たちから多く寄せられるのは、やはり「成果物を納品したのに支払いが遅延している」といった支払いに関する相談です。

 ただし、親事業者は決して意図的に違反をしているわけではありません。フリーランスを含む多くの下請事業者と取引関係にある親事業者にとって、すべての取引を正しく管理するのは大きな負担であり、そうした業務を手作業で行っているとどうしてもヒューマンエラーが発生して下請法違反のリスクが高まるわけです。このようなリスクを軽減するためにも、多田先生がおっしゃるように一連の取引プロセスをシステム化することは非常に重要だと考えています。

コンプライアンス遵守となめらかさを
両立する「pasture」

―― pastureは、どのようなサービスなのでしょうか。

高澤 pastureは過去にフリーランスとして働いていた私自身の経験も生かして開発したフリーランスマネジメントシステムであり、二つの大きな特長を備えています。

 一つは「コンプライアンス遵守」です。フリーランスと取引する親事業者には、多田先生からの指摘があったように下請法を守りながら発注や請求、進捗などの管理が求められます。しかし、フリーランスとの取引が増えれば事務処理にかかる業務コストも増大化します。このような業務課題を解決し、下請法に定められた親事業者の書面交付義務や支払期限義務を遵守するように一連の取引プロセスをシステム化したのが、pastureなのです。

 もう一つ、pastureには「なめらかさの実現」という特長があります。pastureは「もっと働き方をなめらかに」というビジョンを掲げていますが、これは発注元の親事業者とパートナーである下請事業者とのコミュニケーションを円滑にするサービスであることを表しています。企業の担当者もフリーランスも簡単にアクセスできるので、双方の事務作業を効率化することができます。マルチデバイス対応のコミュニケーション機能や承認機能、発注担当者が変わってもフリーランスのスキルや取引履歴が分かるタレントマネジメント機能などを備え、フリーランスとの関係性をなめらかにできることが大きな特長です。

 この二つの特長を両立させるpastureを利用すれば、親事業者のフリーランス管理業務負荷を大幅に軽減し、事務処理にかかる時間を75~80%削減できた事例もあります。フリーランスが増えてもバックオフィスの人数は変えずに対応できるので、pastureのお客様の中には、フリーランスを増やして事業を伸ばしている企業様もいらっしゃいます。労働人口の減少、人材不足が叫ばれる中、フリーランス人材は事業成長に欠かせない存在になりつつあります。

多田 高澤さんの説明を伺って、下請事業者との一連の取引プロセスをシステム化するpastureは、コンプライアンス遵守に取り組む親事業者にとって、極めて役に立つシステムだと感じました。

 特に注目したのは、親事業者と下請事業者の関係性を「なめらかにする」というpastureの特長です。下請法を守るために書面を交わすことになると、フリーランスとの関係性が硬直化するおそれもありますが、pastureのコミュニケーション機能やタレントマネジメント機能を使えば、彼らへの発注もスムーズに進められるでしょう。フリーランスが増えて管理工数が増えてくると、フリーランスへの発注は控えようということにもなりかねませんが、pastureによってその負担を乗り越えられるとなれば、画期的なことですね。

写真:対談風景

インボイス制度など、今後の法令改正にも対応

―― ここまで下請法についてお話を伺ってきましたが、税制では2023年10月からインボイス制度が始まります。この制度もフリーランス、および彼らと契約する企業にどんな影響を及ぼすでしょうか。またpastureは、インボイス制度にどのように対応する予定でしょうか。

多田 インボイス制度は、親事業者が消費税納税の際に税額控除を受けるために、取引相手の下請事業者が発行した消費税率・税額が記載された「適格請求書」を保存しなければならないという制度です。この制度によって、フリーランスが発行する請求書にも正しい税率の消費税額を記載しなければなりません。これは、フリーランスにとっても企業にとっても大きな負担になるので、システム化の利便性・重要性はますます高まることになります。

高澤 pastureのインボイス制度対応については、消費税課税事業者の登録番号を入力できるようにしたり、インボイス制度に合わせた請求書フォーマットを用意したりするなどの準備を進めています。pastureではインボイス制度が始まったあとも、これまでのオペレーションを変えずにフリーランスマネジメントが行えるシステムを提供していきます。

 また今後は、フリーランスに限らず発注先の法人下請事業者も含めた管理や、発注予算の管理から実際の支払いまでの業務を一元化できるように、クラウド会計システムとの連携強化なども計画しています。

多田 法令の変化に柔軟かつ即時に対応して進化していけるのもクラウドサービスならではのメリットですね。今後のいっそうの機能拡大を期待しています。

フリーランスマネジメントを効率化する
クラウドサービス「pasture」

電子契約サービスと連携した契約書の作成・送信、発注書の作成・送付、上長や経理担当者の承認を経た請求管理など、フリーランスをマネジメントする際に必要な機能を提供。社員からの評価や、過去の取引実績を可視化できるタレントマネジメントの機能も装備する。また、会計ソフト、CRM(顧客関係管理)ツール、チャットツールなどの外部サービスとの連携も充実している。

画面キャプチャ:pasture1
画面キャプチャ:pasture2

投稿者: 瑚心すくい

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