大きな組織より在宅で働きたい 女子大生1000人調査

女子大生が就職や働き方で「危機への備え」を重視し始めた。新型コロナウイルス感染拡大の前後の変化を聞いた日本経済新聞の調査では、民間企業で重視する条件として「在宅勤務ができる」が2.6倍に増加。採用・転職が安定しやすい専門職や、結婚・出産後もパートナーと同様に家計の柱として働くことを志向していた。現実を見据えた働き方を選ぶ傾向は今後も強まりそうだ。

■変化に強い企業へ 当初の志望を一転

新型コロナウイルス対策のため、最終面接の部屋に設置されたアクリル板(6月1日、東京都千代田区の三井物産)

新型コロナウイルス対策のため、最終面接の部屋に設置されたアクリル板(6月1日、東京都千代田区の三井物産)

調査に合わせて、大手企業への就職が女子大トップクラスの、東京女子大学4年生に取材した。

「コロナ拡大後に志望をIT(情報技術)企業へ切り替えた」。中村奈央さんは就職活動を振り返る。以前は客室乗務員を志望し、就活予備校に通っていた。しかし、参加したインターンの雰囲気やニュースなどから航空大手の採用活動が止まる気配を察知。業界のリスクを目の当たりにし「変化に強い企業に就職したい」(中村さん)とIT企業を第1志望に据え、内定を獲得した。「在宅勤務への切り替えが容易で職種も多い」のが決め手だ。

宇都宮栞さんの希望は東京での就職だった。転勤を伴う企業や職種は念頭になかったが、コロナ禍で「自然災害などのリスクも意識するようになり、1カ所で生活するのは危ない」と考え直した。来春は金融業で転勤のある職種に就く。藤田友香さんは絶対に大企業に就職したいと思ったという。「最初の就職先が経営危機に陥ったり、自分とミスマッチだったりしたとき転職しやすい」のが理由だ。

未曽有の状況での就活で、当初の希望を変えた学生は多い。日本経済新聞は7月上旬、全国の女子大学生1~4年生計1000人に就職や働き方の理想が、コロナ禍前後でどう変化したかを調査した。浮かび上がったのは変化に適応できる働き方を求める姿だ。

コロナ後は危機に備えて仕事や働き方を考える傾向が強くなっていた。在宅勤務への関心が高まったのが特徴だ。理想の働き方を聞いた設問で多く選ばれた順に並べると「在宅勤務で働く」はコロナ前の6番目からコロナ後は3番目へ浮上。「大きな組織で働く」を抜いた。民間企業で重視する条件でも「在宅勤務」は17.5ポイント増え、変化率が最も大きかった。

自由回答では「テレワークが可能など、臨機応変に対応できる仕事が大切」「子供がいると感染が怖い。できるだけ在宅で働きたい」が並んだ。

女子大生の就職動向に詳しい京都女子大学の橘木俊詔客員教授は「今後は在宅勤務ができる企業とできない企業で人材獲得に差が出る」と指摘する。また、「地方の学生が東京での就職を敬遠する傾向も高まっており、在京企業の地方移転も増えるのでは」という。

調査では公務員のほか、国家資格の医師や看護師、弁護士などの専門職で働きたいとする割合が高まった。自由回答では「国家資格を持っていると職を失うことがない」「手に職をつけることの重要性を改めて感じた」との回答が目立つ。

学生の就職希望の動向に詳しいリクルートキャリア就職みらい研究所の増本全所長は「コロナ時代にはどの企業が安定しているかは分からなくなってきており、失業リスクがより低い専門職の志望が増えている可能性がある」と語る。

■出産後も一家の「大黒柱」に

注)マイボイスコムを通じ7月上旬、インターネットで調査。大学1~4年生の女性各250人ずつ1000人が回答。仕事と家庭の理想のバランスのみ単数、他は複数回答

注)マイボイスコムを通じ7月上旬、インターネットで調査。大学1~4年生の女性各250人ずつ1000人が回答。仕事と家庭の理想のバランスのみ単数、他は複数回答

仕事と家庭の理想のバランスを聞いた設問の回答でも、危機意識の高まりが見えた。「育児中もパートナーと同様に働く」を選んだ割合は、コロナ後は2.7ポイント増。コロナ前は控えめな「育児中もパートなどで働く」が0.4ポイント上回っていたが、これを逆転して最も選ばれていた。

安部日向子さん(東京女子大、以下同)は「将来のパートナーの収入が何らかの理由で止まった時、共倒れになってはいけない。自分も大黒柱として稼ぎたい」と語った。

学生の考え方がコロナを機に大きく変化している。対応できない企業は欲しい人材を獲得できない可能性がある。

鈴木らにさんは就活中、コロナの拡大に伴う企業の就活生への対応を見ていたという。従業員への対応に直結すると思ったからだ。「面接の時期をコロナの状況が落ち着くまで遅らせるかどうかを学生に選ばせてくれたり、連絡に『一緒にコロナを乗り越えましょう』など添えてあったりした企業は、従業員を大切にする感じで印象がよかった」

逆に「対面面接を強行する企業や、コロナの影響で急にスケジュールを変えたのに、きちんと連絡をしてくれない企業は、大きくてしっかりしていそうな企業でも印象が悪くなった」。 来春の採用活動は続いている。企業は学生が何を考え、見ているかを意識し、柔軟かつ適切な対応が必要になっている。■将来、深く考える機会

東京女子大はオンラインで学生の就職相談に乗っている

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東京女子大はオンラインで学生の就職相談に乗っている 学生は将来のことをより深く考え、働き方を選ぶようになっている。コロナのような災厄の発生時に素早く対応できるのはどの企業か、経済危機でも業績が安定しているのはどの業界かなど自らの前にある選択肢をこれまで以上に多様な視点で分析している。東京女子大学が今年から始めたオンライン就職相談では対面で実施していた例年の2倍の相談が寄せられたという。
 コロナは厄介だが、自分の働き方について深く考えるのは悪いことではない。就活を終えた学生への取材では、企業に対して自分が本当に求めているものに気付いたとの声も多かった。これにより企業とのミスマッチを減らせるなど、前向きに捉えることもできそうだ。(三隅勇気)

投稿者: 瑚心すくい

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