子育て家庭の在宅勤務、時間管理より成果で評価を 守島基博・学習院大教授

6月 12, 2020 未分類
在宅で勤務する会社員

在宅で勤務する会社員

新型コロナウイルスの対策として多くの職場でテレワークが広がった。学校も一斉休校となるなどし、子育て世代は在宅勤務と育児の両立に苦慮することになった。テレワークは働き方改革の目玉の一つとされ、これを機に定着していくことが期待されている。人材マネジメントを専門とする守島基博・学習院大教授にポイントを聞いた。

守島基博・学習院大教授

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守島基博・学習院大教授

安倍晋三首相の要請により全国の小中高校などは3月2日から一斉休校となり、幼稚園や保育園の利用も制限され、大半の子どもは自宅で過ごすことになった。保護者の方も在宅勤務を求められ、家族が平日も丸1日、自宅で過ごす異例の状態が続いた。

「家庭と職場の線引きが薄くなり、自宅で仕事をしながら家庭生活とどうバランスをとるかが重要になった」と守島教授は指摘する。

子どもも家にいれば日中は仕事が思うようにはかどらないこともある。夜に子どもが寝た後、昼間できなかった仕事を進めるといった働き方をせざるをえない。

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任意団体「コロナ危機下の育児と仕事の両立を考える保護者有志の会」が5月、首都圏の未就学児の保護者約1600人を対象に行った調査では、65%が「在宅勤務を時折中断しながら世話をする」と回答した。深夜や早朝、週末に仕事の穴埋めをする人も37%いた。業務の達成具合については過半数の人が平時の半分以下と答えた。

テレワークを定着させるには「働く人が業務の過程を自由にコントロールし、成果で評価される仕組みが必要だ」と守島教授は話す。定時の勤務体系を見直し、フレックスタイム制でもコアタイムは短くする。上司は遠隔で働く部下の勤務状況の監督に力を入れるのではなく、あらかじめ決めた目標を達成できているかどうかに目を向ける。

緊急事態宣言は解除され、元通り職場に出勤する人が増えている。学校は再開し、幼稚園や保育園も日常に戻ってきている。だが守島教授は「コロナ対応のテレワークは働き方改革の前進につながった面もある。流れを止めてはいけない」と強調している。

経営者がテレワーク阻害 「日立ショック」で変わるか

日経BP総研

日立製作所が在宅勤務と新たな人材管理を柱とする人事制度改革に乗り出す。テレワークを標準的な働き方と位置付け、来春にも在宅勤務の比率を5割程度にする。社員の職務を明確にして達成度合いを見る「ジョブ型」の人事制度も本格導入する。狙いは新型コロナウイルス対策や優秀なデジタル人材の獲得にあるが、それだけではない。真の目的は構造改革の総仕上げにある。

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「トップダウンによる改革と、現場主導の働き方改革。この両面がポイントになる」。日立の東原敏昭社長は5月29日に開いた中期経営計画の進捗説明会で、人事制度改革の意義をこう説明した。

日立は子会社の売却や事業の見直しを急ピッチで進めてきた。東原社長は「この10年間の改革で財務は改善した」と改革の手応えを語る。

並行して、製造業からサービス業への転換を目指し、あらゆるモノがネットにつながる独自のIoT基盤「ルマーダ」の拡販に全社で臨んでいる。ルマーダを使って顧客企業のデータ収集や分析を支援する。ルマーダ事業の売上高は既に1兆円を超え、2020年度は新型コロナウイルスによる逆風下でも12%増の1兆1600億円を見通す。

事業の構造改革が進む一方、働き方や人事評価制度といった、いわば社内の構造改革は海外の競合に比べると遅れていた。アフターコロナの時代はデジタル技術を前提に、地球規模の新たなリスクにも耐えられる仕組みを整える必要がある。社内の構造改革によって「社員一人ひとりに働きがいを感じてもらい」(東原社長)、社員の力を合わせた総和の拡大を狙う。

■3000人調査に寄せられた経営者への不満

もっとも、日立のように真っ正面から働き方改革に挑む日本企業はまだ少ない。日本どころか世界が一丸となって新型コロナウイルスと闘っているこの時期に、テレワークなどの新たな技術を活用しきれていないという日本企業の現実がある。テレワークに限らず、今回のような想定外の事態が起きると、経営判断のスピードと質の差がはっきりと表れる。阻害要因となるのはズバリ経営者だ。

「トラブル対応以外はテレワークにできるはずだが無駄に毎日通勤している。そういった判断をトップができない状況にある」

日経BP総合研究所イノベーションICTラボが4月にビジネスパーソン約3000人を対象に実施した「新型コロナ対策テレワーク実態調査」に寄せられた自由意見である。緊急事態宣言のさなか、出社を強いられたという声だ。テレワークに後ろ向きな経営者の姿勢を厳しく非難する、回答者の叫びとも言える。

もっと辛辣な書き込みもあった。

「職場にノートパソコンが少なく、デスクトップパソコンを自宅に持ち帰り、自宅のテレビにつないで業務することを会社は検討している。でも単身赴任の社員などテレワーク環境のない人がいる。そんな社員を経営者がバカにする。テレワーク対策もしないのに社員を批判する愚かな経営者にはあきれてしまう」

■経営者の決断力が問われる

テレワークのためのIT投資は成果を測りにくい

テレワークのためのIT投資は成果を測りにくい

テレワークのための投資は売り上げや利益にどの程度貢献しているのかが分かりにくい。経営者がテレワーク関連の投資に消極的になりやすいのは、そのためだ。売り上げ増に直結する需要予測システムや、コスト削減につながる在庫管理システムなどとは性質が異なる。成果を測りにくいからと、お金を投じてこなかった企業において、そのしわ寄せがいま現場の社員に及んでいる。

テレワークの導入によって、業績アップどころか一時的には業務効率が下がる可能性がある。それでも育児や介護などで時間や場所に制約がある社員のために、そして緊急時でも事業を継続するために、テレワーク環境の整備は必要だったはずだ。日ごろからそう考えて準備していた会社、あるいは新型コロナの危機を踏まえ覚悟を決めた会社と、いまだ決断できない会社の差が出ているのが今の日本である。

ウェブ会議などのIT(情報技術)ツールを導入していたとしても、それらを社員が使いこなせるように業務ルールや社内文化を変えていないなら十分とはいえない。テレワークを本気で使いこなすには、目に見えないところで働く社員を正当に評価する仕組みなどが欠かせないからだ。

「日本を代表する大企業の日立がテレワークを標準的な働き方と位置付ける発表をしたのは衝撃的だった。日本企業が変わるきっかけになるかもしれない」。テレワークに詳しいコンサルティング会社アネックスの天笠淳代表取締役はこう話す。

インターネット企業やスタートアップ企業の表明ならば、大企業の経営者は「ウチは新興企業や中小企業とは違う」と言い訳できる。ところが重厚長大な日立が動いたとなると、ほとんどの経営者が言い逃れできない。

テレワークは、デジタル技術で事業を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)そのものだ。効果がみえにくく、金額の妥当性が分からない中で、経営者は投資を決断し、人事評価などの制度改革を並行させ、結果を出していかなければならない。「日立ショック」で日本の経営者は覚醒できるだろうか。

(日経BP総合研究所イノベーションICTラボ上席研究員 大和田尚孝氏)

投稿者: 瑚心 すくい

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