「昇進は男女同数」で女性活躍 男性も育児休暇100% 埼玉・三州製菓の女性登用策

6月 3, 2020 未分類

女性の活躍を推進する取り組みが遅れがちな中小企業。しかし、中堅菓子メーカー、三州製菓(埼玉県春日部市)はこの分野の先進企業だ。男性と女性を同時に昇進させるなどのルールを設け、女性管理職比率は政府目標「2020年に30%」に対し、既に31%。同規模の企業が抱える課題の解決策を探った。

リーダーの飯田友梨子さんは出産後も働き続けられる会社として同社を選んだ(企業提供)

リーダーの飯田友梨子さんは出産後も働き続けられる会社として同社を選んだ(企業提供)

■人材を呼び込む 男女同一処遇

「働くなかで、性別や年齢を理由に活躍の場を奪われることはないと感じている」と話すのは、企画室でリーダーを務める飯田友梨子さん。自宅に帰れば4歳と2歳の2児の母親だ。「出産後も働ける会社」に憧れ、中途入社したという。男女同一処遇が進み、人材が集まりやすくなった。

同社がダイバーシティ経営や女性登用に取り組み始めたのは1988年。創業者の父から経営のバトンを受けた斉之平伸一社長が着手した。きっかけは、同社に入る前に勤めた松下電器産業(現パナソニック)での経験だ。「当時の女性社員は補佐的な仕事しかさせられず地位が低かった。これではいけないと思った」

就任早々、「男女共同参画委員会」を設けた。女性社員を委員長に据え、各部門から優秀な人材を集め、現場からのボトムアップで女性活用を提案する仕組みを作った。

その委員会が最初に出したのが、経営会議に参加する資格を持つアシスタントマネージャー以上について、男性を1人昇進させる時に女性を1人同時に昇進させるというアイデア。男女の均等待遇を意識した施策で、男女の昇進を同時に行うことで自然に女性の比率が上がる。女性役員の数を割り当てるクオータ制の変形版ともいえる。

当初は「女性に人材がいない」「管理職になりたがらない」と否定的な声も集まった。しかし、斉之平社長は耳を貸さなかった。「押し切って進めないと何も変わらない」

以来、同委員会からの提案を一つひとつ具体化してきた。例えば、育児中の社員の残業免除。子供の小学校入学までという条件だったが、「子どもが小3になるまで」と要望が集まり、期間を延長した。

■ワークライフ・バランス向上 男性も同じ 女性が長く働くにはワーク・ライフ・バランス(WLB)が不可欠。効果を発揮しているのが「一人三役制度」だ。事務部門の社員はメーンの仕事以外に2つの業務スキルを身につけることで、急な休みをとっても誰かが代役を務めることが可能になった。女性社員の4割がパート社員からの転換だ。

女性の力を引き出す仕掛けは、男女を問わないWLB向上につながった。男性社員の育児有給休暇取得率は100%と、育児休業取得率の全国平均(6%)を大きく上回る。

以前は赤字になる年もあったが、女性活躍に乗り出してからは経常黒字が31期続く。斉之平社長は業績が安定した理由を「女性が潜在力を発揮してくれたことが大きかった」とみる。

女性社員のアイデアが実を結んだパスタスナックを手にする斉之平伸一社長(同社店舗で)

女性社員のアイデアが実を結んだパスタスナックを手にする斉之平伸一社長(同社店舗で)

■女性だから生まれたヒット商品

その象徴が女性社員が中心になり商品化した「パスタスナック」の成功。せんべいなど米を原料とする菓子メーカーだが、小麦粉が原料のパスタを材料にする発案をしたのは女性社員だ。「男性社員からは絶対に出てこない発想」(斉之平社長)。パスタをスナックに加工する機械が日本中探しても見当たらず、一から内製化する苦労もあったが、今は年商約25億円の同社で売上高の2割を占める。

女性活躍を掛け声だけに終わらせないためには「社長や役員のリーダーシップが欠かせない」(斉之平社長)。同社では女性活躍について成果指標(KPI)を設け、最終責任者の社長が毎月の経営会議で進捗を報告する。女性管理職比率の目標は政府より高い35%としているが、「あまり意識していない」と斉之平社長。社員からも「もう女性活用企業なんて言わなくてもいいのでは」という声があがっているという。■中小企業、女性登用に遅れも
中小企業の女性活用はあまり進んでいない。厚生労働省の2018年度「雇用均等基本調査」によると、三州製菓(約200人)と同規模の従業員100~299人の中小企業の場合、課長相当職以上の女性管理職比率は8・3%。5年前の13年度より1・8ポイントの上昇にとどまり、5000人以上の大企業(同3・1ポイント上昇の7・1%)よりも伸び率が小さい。
 中小企業にとって女性は大企業以上に貴重な労働力だ。しかし、従業員数の制約もあり、女性が働きやすい環境や制度を整える余裕がないのが現状だ。
 女性活躍推進法の改正により、女性登用の行動計画や情報公開を義務付けられる対象が大幅に拡大。2年後の22年4月からは従来の従業員301人以上から、101人以上の企業に広がる。
 女性の就労問題に詳しい労働政策研究・研修機構の周燕飛主任研究員は、対策として三州製菓の「一人三役制度」に注目する。日本の大企業では雇用契約で職務を決めずに様々な仕事を経験させる「メンバーシップ型」の働き方が普通で人員のやりくりが自由。中小企業では勤務地も職務も限定する「ジョブ型」雇用が多く、社員が突然辞めると人材難に直面する。
 一人三役制度のような仕組みがあれば、誰かが休んでも周りがサポートし、業務への影響も抑え、女性も働きやすくなる。「三州製菓はジョブ型を軸に、メンバーシップ型の良さを採り入れている。人材確保に苦しむ企業も見習ってほしい」と周氏は話す。
(木ノ内敏久)

投稿者: 瑚心 すくい

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