日本の女性活躍推進は先進国でも周回遅れといわれている。中でも役員への女性登用は思うように進まない。経営の方向性を担う取締役会も、多様な人材構成が重要だ。女性役員を巡る世界の趨勢と日本の課題を2人の識者に聞いた。
――30%クラブとは何か。
「女性役員比率を高めるために2010年に英国で生まれた。大手企業の最高経営責任者(CEO)らが個人として加盟する。メンバー7人で発足し、今は300人を超えた。活動は米国やブラジルなど世界14カ国・地域に広がった。日本では今年5月に資生堂の魚谷雅彦社長を代表に活動を始めた」
「団体名のとおり、女性役員比率を30%に高めるのが目的だ。30%とは少数派グループが一定の力を得る最低水準を指す。日本ではTOPIX100対象企業の女性役員比率を30年までに30%に伸ばす目標を掲げる」
――日本は女性役員比率が低い。目標達成できるのか。
「英国が達成したのだから、日本も不可能ではない。英国の主要企業(FTSE350社)の女性役員比率は発足時は約10%。今は30.1%に増えた。日本の女性役員比率は現在10.5%で、17年以降急速に伸びている。女性活躍の重要性が経営者に企業に浸透してきた証しで、さらに加速すると期待できる」
――女性役員比率を高めるのに英国で有効だった施策は。
「経営層の男性が幹部候補の女性に仕事上で助言する『メンター制度』だ。英国では118社が参加して始めた。工夫したのは異なる勤務先の男性と女性を組み合わせたこと。上下関係がないので女性はオープンに仕事の悩みを相談できる」
「女性は適切な助言を得て成長が促され、役員にふさわしい能力を手に入れた。男性は他社の優秀な女性を知ることで自社の課題に気付き、女性登用を進める仕組みを整えたり、女性部下を積極的に応援したりするようになった。日本でも同様の仕組みを検討していきたい」
――日本で女性役員を増やすには何が大切か。
「まずは女性が自信を持つこと。日本女性は教育レベルも高く、優秀な人材が多い。活躍を阻む壁を打ち破る強い気持ちを持ってほしい。男性は父として夫として、娘や妻が仕事で活躍できるように家庭でサポートすることも重要だ」
マスターカード副会長。シティグループなど金融機関で活躍し、マスターカードに2011年8月入社。フォーチュン500企業のインターコンチネンタル取引所の取締役の兼務も。19年、30%クラブ会長に就任。