日本人女性、国連で躍動 多様性尊重 働きやすく

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の高等弁務官を務めた緒方貞子さんが10月に亡くなった。世界で初めて高等弁務官に就いた女性だった。国連の機関で働く日本人の状況を調べると、女性が増え続けており、日本の中央官庁や企業に比べると女性が占める割合も圧倒的に高い。緒方さんを見て「国連機関は女性の実力が認められる場」との認識が広がったためだとみられている。

外務省によると2019年1月時点で国連機関で働く日本人女性は一般職を除く専門職以上が542人、そのうち局次長級以上の幹部が41人。2001年に比べるとそれぞれ2.5倍、3.1倍に増えた。日本人職員に占める女性の割合は専門職以上が61.5%、幹部で47.1%に上る。国連機関全体の女性比率はそれぞれ44.7%、36.8%で、世界的に見ても日本人女性の比率は高い。

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事務次長に日本人女性

2017年5月にはUNHCR出身の中満泉氏が軍縮担当の国連事務次長に就いた。国連事務総長、副事務総長に次ぐ要職で、日本人女性が国連事務局の事務次長に就くのは初めてだ。事務次長の下の事務次長補級には日本人が8人いて、そのうち4人が女性だ。

「緒方さんにあこがれ、背中を押されて国連のドアをたたいた日本人女性が幹部になりつつある」。国連広報センター(UNIC)の根本かおる所長は語る。根本さん自身、緒方さんをみて1990年代に民間から国連に転じた。

1999年に男女雇用機会均等法が改正され、日本国内でも女性の社会進出が一気に進んだ。それでも国家公務員の女性比率は今年7月で19.9%、課室長相当職以上では5.3%にすぎない。民間企業も2018年度の雇用均等基本調査によると総合職が18.8%、課長相当職以上が11.8%だ。国連機関の女性比率とは大きな差がある。

国際的な職場に女性が集まっているのか。例えば外務省をみると今年7月時点で女性は29.5%、課室長以上で6.1%だ。緒方さんが理事長を務めた国際協力機構(JICA)は4月時点で38.9%、管理職は5.1%。やはり国連機関に比べて低い。

組織文化の違い?

なぜ国連に日本人女性が集まるのか。UNICの根本さんは「国連機関はジェンダーを含めて徹頭徹尾、多様性を尊重する組織だ。女性にとっては日本の組織より働きやすい」と話す。例えば国連機関では就業者が出社・退勤の時間を柔軟に選べるフレックスタイムや在宅勤務の制度が整っており、育児をする女性でも働きやすいという。

国連児童基金(UNICEF)東京事務所の佐々木佑専門官は「国内で働いても窮屈だと感じる女性が海外に進出しているのでは」と分析する。UNICEFには約120人の日本人が勤め、その7割以上が女性だ。「子育ては女性」という固定観念もなく、男性も育児制度を幅広く活用する。世界各国に散らばる事務所では授乳施設を設けるよう推奨しており、組織全体に男女が分け隔てなく協力する文化が広がっている。

佐々木さんは2014年にUNICEFで働き始めた。その前に日本企業に勤めていた。男性社員と一緒に深夜まで働いたり、社内の飲み会でお酒をついだり、違和感を覚える慣行が残っていたという。

日本男性は消極的?

2017年に就任した国連のグテレス事務総長は、女性の政策決定者を増やすことを「個人的な緊急優先課題だ」と訴えてきた。国連職員の半数を女性にする目標を掲げ、幹部も増やしている。国際的に働きたい日本人女性にとっては国連の対応は追い風だ。

とはいえ、日本政府としては好材料ばかりとはいえない。国連事務局には人口や拠出金などから割り出した「望ましい職員数」という指標がある。日本はこれが半分にも満たない水準だ。国連で働く職員や幹部の数は出身国の国際社会での発言力に関わる。

女性に比べて男性の伸びは鈍い。「日本男児にも国際機関で活躍してみようという意気込みを見せてほしい」。河野太郎防衛相は外相時代、こう訴えていた。UNICの根本さんは「日本は男性にとってより働きやすい雇用環境とも言える。男性からみれば、日本の組織から国際機関に転じる場合の『機会費用』がより高いことも背景にあるのではないか」と指摘する。

政府は給与などを負担しながら国際機関に人材を送る「JPO派遣制度」を拡充している。予算を増やして地位や収入面の不安を払拭する狙いだ。高校生へのガイダンスも積極化し、男女問わず国連機関の志望者を増やそうとしている。

投稿者: 瑚心すくい

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