働き方進化論 成果も時間も濃密に 突き抜ける職場(1)

政府は働き方改革の旗を振り、戦後70年以上続いた年功序列や終身雇用といった制度にメスを入れようとしている。1人当たりの生産性の向上や、外国人や女性など多様な人材の活躍なくしては少子高齢化が進む日本は世界に伍(ご)していけない。一方で現場には先行するヒントがあふれている。改革の行方を追う。

2月中旬の午後4時30分。味の素の本社からは仕事を終えた人々が次々と出てきた。食品などの通信販売を担う瀬上義人(36)は足早に家路についた。家族で食卓を囲み、子どもを寝かしつけ、午後9時から1時間ほど仕事をした。

以前は12時間勤務もざらで残業は月に40時間弱だったが今は15時間ほど。マーケティング業務の自動化や文書のペーパーレス化を進め、ウェブ会議などを活用することで無駄を徹底的に排除。所定時間の削減と合わせ、労働時間は年間で320時間も短くなった。「実は無駄も多かったと驚く」と瀬上はいう。

「効率化で生まれた利益は社員に還元する」。同社はそう宣言し、全員の月額給与を1万円増額した上で17年に労働時間の全面短縮に乗り出した。今は1日7時間15分労働で、同社の17年度の1人あたりの総実労働時間は1842時間と前年から74時間減った。しかし18年3月期の連結売上高は1兆1147億円と前年比2.2%増だ。20年度は7時間労働を目指す。

働き方改革の肝は生産性の向上にある。オランダの住宅サービスを手掛けるNPO法人ヴォーンベドレイフでは、約390人の常勤雇用者でも勤務は週に2.5~5日。それでも十分なのは仕事への集中力を高め、生産性を最大限に高める仕組み作りにある。

 

生産性を高めるため多様なスタイルで働ける場を用意(オランダ・ヴォーンベドレイフ社の1人で集中できるスペース)

生産性を高めるため多様なスタイルで働ける場を用意(オランダ・ヴォーンベドレイフ社の1人で集中できるスペース)

個人の机を無くし、4つの拠点を本社に集約。打ち合わせなどの移動時間を大幅に削減し、定例会議もやめた。オフィスには様々なスペースを設け、新規案を練るなら同僚と会話しやすい場所、改善点を洗い出すなら1人で集中する部屋と課題に応じ最適な場所を各自が選び自由に移動する。「社員が自分の仕事にリーダーシップを発揮するようになった」と財務管理部長のルネ・スパンはいう。

世界の企業が取り入れつつあるのがオランダ発祥で仕事に応じ働くのに最適な働き場所を選ぶアクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)だ。旗振り役のコンサルティング会社、フェルドフーン社のティム・デ・フォスは「人が本当に集中できるのは20分程度」と話す。

日本の正社員は年平均2千時間超も働くが、日本生産性本部によると17年の1時間あたりの労働生産性は47.5ドル(約5220円)と先進7カ国で最も低い。

無限に働く男性会社員を前提に日本は成長してきた。だが労働力調査では18年の就業者6664万人の4割超を女性が占め、年齢別では65歳以上の高齢者の増加が目立つ。外国人労働者は146万人と派遣社員を上回った。働き手も顧客も、求められる商品やサービスも多様になるなか、イノベーションを生む変革が急がれる。(敬称略)

投稿者: 瑚心すくい

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