女性主導で新分野開拓

創価大 糖鎖生命システム融合センター

創価大学は2019年4月、新しい研究拠点「糖鎖生命システム融合センター」(東京都八王子市)を開設した。様々な生命現象にかかわっている糖鎖という生体材料と、ビッグデータを扱う情報科学の融合を深めて新分野の開拓を目指す。2人の女性研究者が拠点の運営で陣頭指揮する点も大きな特色だ。

「糖鎖は日本が得意とする分野だが、研究は活発になったり滞ったりを繰り返してきた。創価大は一貫してこのテーマを追い続け、強みをもっている」。センター長に就いた西原祥子教授はこう説明する。

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糖鎖とはその名の通り、様々な種類の糖が鎖のようにつながってできた化合物だ。1個だけの「ブドウ糖」や数個~10個ほどの「オリゴ糖」などが代表例だ。私たちの体の中で細胞の表面についていて、標識のような役割を果たしている。血液型のA型やB型は糖鎖の種類によって決まっているし、ウイルスの感染ではくっつく糖鎖の有無が重要な鍵を握っている。

この研究の難しい理由は、糖鎖の組み合わせや機能が複雑すぎることだ。鎖のつながり方が少しでも違うと全く違う機能を発揮する。たんぱく質のように成分を詳しく分析できず、大量に合成する手法も確立していない。緻密で地道な作業が必要になる。

西原教授はショウジョウバエやマウスなどの実験動物を使い、糖鎖の種類や役割などを調べてきた。00年代には国の大型の研究予算を獲得し、生命の維持にかかわる重要な糖鎖を多数発見する成果をあげた。糖鎖研究者で組織する「日本糖鎖科学コンソーシアム」の副会長も務める。「今後は人間で、糖鎖の種類と機能の全容を解明する研究が重要になる」と展望する。

そこで鍵を握る研究テーマが、コンピューターを駆使して生命科学のデータを解析する「バイオインフォマティクス」だ。副センター長に就いた木下聖子教授がこの分野を率いる。

米国生まれの木下教授は米ノースウエスタン大学でコンピューター工学の博士号を取得した専門家で、06年に創価大講師に転じた。糖鎖に特化したバイオインフォマティクスに関する国際的なコンソーシアムを立ち上げ、主要メンバーとして活躍している。同センターはほかに感染症神経科学などの専門家を加えた6人の陣容になっている。

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神経細胞の異常で発症する病気と糖鎖の関係、感染症にかかわる糖鎖の分析と予防技術の開発、受精卵から様々な細胞に変わり成長する発生の仕組みと糖鎖の機能など研究テーマは数多い。センターに異分野の研究者を集め、融合研究から解明の手がかりをつかむねらいだ。

滑り出しは順調だ。再生医療の鍵を握るiPS細胞で、品質を保ったまま保存する安価な薬剤候補を見つけ国際科学誌に発表した。これまでに培った糖鎖の解析を基に、従来の高価な添加剤の代わりになり得る糖鎖を主成分とする化合物を合成できた。

感染症にかかわる糖鎖の研究は重要なテーマだ。ある糖鎖はデング熱エイズ脳炎など多くのウイルスが感染する経路になっていると考えられている。糖鎖との関係がすでに判明しているマラリアやインフルエンザでは、ウイルスと糖鎖が結びつく詳しい仕組みを調べる。他の大学との連携にも意欲をみせる。

女性が主導する科学技術分野の拠点は国内では珍しい。創価大は先進事例と位置づけ支援していく。

(猪俣美里氏)

投稿者: 瑚心すくい

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