旅館を憧れの仕事に(1) IT駆使し経営改革

9月 17, 2019 セカンドステージ

陣屋女将 宮崎知子さん

専業主婦だった女性が廃業寸前の老舗旅館に入り、夫とともに立て直す――。そんなドラマのような話を地で行くのが「陣屋」(神奈川県秦野市)の女将、宮崎知子さん(42)だ。ITで業務を効率化するとともに、従業員の休みを確保するため週3日休館を導入。旅館を憧れの仕事に変えようと奔走している。

 

新宿から小田急線で1時間、鶴巻温泉郷の一角に陣屋はあります。創業は1918年(大正7年)。1万坪の敷地に18の客室があり、将棋や囲碁のタイトル戦会場にもなっています。

2009年、私が女将として入社したときは、巨額の債務を抱えて廃業の瀬戸際にありました。それから10年、社長である主人とともに立て直しに取り組んできました。11年には黒字に転換、18年の売上高は6億1400万円とほぼ倍増しました。

7年前にパートを含めて120人いた従業員数は3分の1になりました。ほとんどが定年などによる自然減です。一方で平均年収は徐々に引き上げて408万円。宿泊業の全国平均(250万円)を大きく上回っています。来春入社の採用には20人以上の応募があり、3人を採用しました。

経営のことはだれかに教えてもらったわけではなく、すべて自分たちで考えました。主人はせっかち、私はのんびり屋。ゼロから1を生み出すのが主人、私が1を5にするというような役割分担でした。

  立て直しの武器となったのが、「陣屋コネクト」と名付けた自社開発のシステムだ。全従業員がタブレット端末を持ち、クラウド上で情報を共有する。アナログが幅をきかせていた旅館業界では最先端の試みといえる。

 

陣屋コネクトは予約から接客、従業員の勤怠管理、経営分析まで、あらゆる業務を一元管理しています。あるお客様が常温のお水を所望されたら、社内SNSで共有し、顧客データに残します。すると再訪された時に「水は常温で」という情報が共有されます。細かいおもてなしが可能になりました。

(あらゆるモノがネットにつながる)IoTも活用しています。駐車場に車が入るとカメラでナンバーを認識するので、名前をお呼びして出迎えられます。誰でも名ドアマンというわけです。大浴場のタオル籠にもセンサーをつけ、補充や清掃のタイミングを把握しています。

このシステムを使っているのは陣屋だけではありません。12年に陣屋コネクトを外部に販売する会社を設立しました。現在、旅館のほかホテルやレストランなど全国約340施設で利用していただいています。

もっともシステムを導入すれば、それだけで飛躍的に売り上げが伸びるわけではありません。ITはあくまで道具。システムやオペレーションの改善点を常に模索し、工夫をすることが欠かせません。私たちはその努力を10年続けてきました。

(横浜支局長 石川淳一 氏ご担当)

投稿者: 瑚心すくい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です