「男性稼ぎ主モデル」を維持すれば、日本企業は沈没する

7月 22, 2019 働き方改革

上野 千鶴子[NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長]

はっきりと書いてください。「日本型雇用は岩盤規制だ」って。何で女性が企業の中で活躍できないのかというと、基本的に日本型雇用には組織的、構造的に女性を排除する効果があるからです。これを「間接差別」と言います。「女性を排除する」とは直接的にはどこにも書かれていないので。

 あるシステムが、男性もしくは女性のいずれかの集団に著しく有利、もしくは不利に働くとき、それを「性差別」と言います。日本型雇用は「男性稼ぎ主モデル」。夫が一家の大黒柱となり、妻が家事と育児を一手に引き受けることが前提で、今日に至るまで結局、何も変わりませんでした。

 そんな企業社会に男性と同じ条件で女性に「入って来い」と言ってもムリです。男女雇用機会均等法や女性活躍推進法ができましたが、実効性のある罰則規定がありません。冗談みたいな法律ですよ。

 男性稼ぎ主モデルは高度成長期のモデルです。それを日本は今でも惰性のように続けています。多くの研究によって、これがダイバーシティー(多様性)を阻む癌(がん)であることは、ほぼ答えとして出ています。

 しかも、ダイバーシティーを推進すると企業はもうかるということも結論が出ています。それなのになぜ、男性稼ぎ主モデルから抜け出せないのでしょうか。

 川口章さんは著書『ジェンダー経済格差』で差別型企業と平等型企業を比較し、平等型の方が差別型より経常利益率が高いことを示しました。経営者は経済合理性が高いモデルへ企業を変革させるはずです。しかし、日本ではそうならない。なぜだと思いますか。それは、差別的でもシステムとして均衡しているからです。どんなシステムでも均衡していれば、そこに属する人は崩したくない。

 均衡しているシステムの一角が年功序列で、その基である新卒一括採用を日本企業はやめられません。経団連は最近、新卒一括採用に偏った慣行の見直しを決めましたが、均衡しているシステムの一角を崩すと、人材の査定評価の在り方などすべてを連動して変えなければなりません。それだけの覚悟があるのか疑問です。だから私はいつも、ダイバーシティーを強化するという企業に対して、「新卒一括採用をやめない限り、本気とは思えない」と言っているのです。

日本企業はまるで、軍隊組織です。男性稼ぎ主モデルに合わない人を排除するシステムで、差別的だけど均衡している。だから、内側から改革しようという動機が働かない。

 日本企業はこのまま、差別型企業のままでいくのでしょうか。平等型が多い外資企業と、商品、労働、金融という3つの市場でグローバルに戦わなければならないというのに。

 組織内にダイバーシティーがある方が、多様な嗜好を持つ消費者に対応する商品を開発できますし、働きやすい職場をアピールして優秀な人材を引き付けることもできます。業績も良くなるでしょうから、投資家も引き付けるでしょう。つまり、日本企業は現状のままでは勝ち目はありません。

 既に巨艦は沈没し始めています。経営者はもちろん、中間管理職の男性が今すぐ意識を変えないと、ある日、もう二度と浮上できなくなっているかもしれません。

 日経ビジネス

投稿者: 瑚心すくい

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